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データで読む開示

食品は「値下げだけ鈍い」とは言い切れない——319か月で見えた化学との短期差

輸入価格が下がれば、食品の企業向け価格もすぐ下がるのか。約27年分を比べると、食品を「値下げだけ鈍い」とはまとめられなかった。はっきり残ったのは、上昇後3か月の動きが食品より化学製品で大きいという違いだ。

最初に要点

  • 輸入価格が上がった後の最初の3か月では、国内価格との結び付きが食品より化学製品で強かった。月のまとめ方を変えても、この短期差は残った。
  • 食品は過去11か月の輸入価格も含めると月々の動きを説明しやすくなった。ただし、食品の遅れの大きさは確定できない
  • 食品の上昇側と下落側の差は推定幅が広く、「値下げ側だけ鈍い」とは絞り込めなかった。足元の指数に、企業の改定日と原料以外の費用を重ねて読む必要がある。

先に結論:安定したのは「化学との短期差」

分析条件を変えても残りやすかったのは、輸入価格が上がった後の最初の3か月で、国内価格との結び付きが食品より化学製品で強いという違いだ。食品の値下がりだけが鈍い、という上下差ではなかった。

食品では過去の輸入価格も含めると説明が増えた。ただ、後の月にどれほど動くか、値上がり時と値下がり時でどれほど違うかは、対象期間や月の扱いで結果が揺れた。だからこそ、対象時期と品目を分けて読む必要がある。

結果の見取り図

調べたこと主な結果読み方
食品と化学の最初の3か月化学製品の方が、国内価格との短期の結び付きが強かった月の扱いを変えても残りやすい差
食品に過去11か月まで加える当月だけより月々の動きを説明しやすくなった過去の動きも見る価値がある
食品の4〜12か月目の追加分後の月にも動く形は見えた動く大きさは絞り切れない
食品の上昇側と下落側値上がり側が大きく見える時期はあった食品全体の決まった傾向とは言い切れない

対象は企業間の出荷価格。輸入側と国内側は品目や比重の違う集計指数であり、ここでは業界全体の価格の動き方を比べている。

輸入指数の上昇に対する国内価格の条件付き累積反応。食品は最初の3か月0.04%相当から最初の12か月0.19%相当、化学製品は0.32%相当から0.35%相当。24か月ブロックによる12か月反応の95%区間は食品0.02〜0.33、化学0.15〜0.58。食品の4〜12か月の追加分は長いブロックでは0を含み、遅れの長さの確定値ではない。
線はモデル上の月々の関連を足し合わせた累積反応。1は発生月を指す。食品の後半の追加分の確かさは、次節で別に検証する。図を拡大表示

概要:当月だけでなく、過去11か月と改定条件まで見る

食品の輸入指数と国内指数は、長い目ではよく似た形だった。しかし、前月からの動きにそろえると、同じ月の結び付きは弱かった。長い目の形と同じ月の動きは別である。そこで、月々の変化へそろえ、過去の輸入価格が後の国内価格とどう結び付くかを調べた。

食品では、当月だけでなく過去11か月の輸入変化も含めると、月々の動きを説明しやすくなった。さらに、対象期間や月の組合せを変え、結果が残る部分を確認した。企業へ当てはめる時は、指数の足元、過去のコスト、製品の改定日、原料以外の費用まで順に読む。

  1. 指数を価格水準ではなく、前月からの変化へそろえる。
  2. 当月に加え、1〜2か月前、3〜5か月前、6〜11か月前の輸入変化を照合する。
  3. 月の組合せと対象期間を変え、結論が残る部分と揺らぐ部分を分ける。
  4. 企業では原料価格、製品改定日、原料以外の費用の順に開示を読む。
検証の詳細を開く

詳しい分析①:319か月を同じ条件で比べる

対象は2000年1月〜2026年7月の319か月である。日本銀行の円ベース輸入物価と、消費税を除く国内企業物価を使った。国内側が測るのは企業間の出荷価格で、消費者が店頭で支払う価格とは段階が違う。食品も、輸入側は「飲食料品・食料用農水産物」、国内側は「飲食料品」という異なる集計範囲である。

出発点を決めるため、まず2本の指数をそのまま比べた。価格水準の相関は0.959だったが、同じ月の変化率の相関は0.092だった。相関は2つの動きが同じ向きにそろう度合いで、1に近いほど強い。長期の線が似ていることと、同じ月に動くことは別だと分かる。

次に、月ごとの通常の違いと国内価格の前月変化をそろえ、輸入価格を当月、1〜2か月前、3〜5か月前、6〜11か月前に分けた。この過去をさかのぼる範囲が「ラグ窓」である。食品では過去11か月を加えるとR²が0.178から0.262へ上がり、説明し残した変動は10.2%縮んだ。R²は同じ319か月の動きにモデルがどれだけ合うかを0〜1で示す値で、ここでは振り返った期間の説明力を比べている。

図の累積反応は、輸入指数が一度だけ1対数%ポイント動く条件で、国内指数との月々の関連を順に足した値だ。「最初の3か月」は発生月〜2か月後、「最初の12か月」は発生月〜11か月後を指す。この数値が表すのは、異なる集計指数の動きの結び付きである。個社については、会社が示す費用と実際の価格改定を別に照合する。

上昇時の条件付き累積関連

品目最初の3か月最初の12か月
食品0.037%相当0.195%相当
化学製品0.320%相当0.350%相当

輸入指数が一度だけ1対数%ポイント上がる条件で、国内指数との月々の関連を足した値。食品・化学とも輸入側と国内側は異なる集計範囲である。

詳しい分析②:月の組合せを変えて結論を揺さぶる

1本の推定曲線が特定の時期だけで決まっていないかを確かめるため、連続する月をまとまりで取り直し、同じ分析を繰り返した。たとえば12か月単位なら、選ばれた1月〜12月をばらさず一緒に動かす。前後の月が似た動きを続ける関係を保つためだ。食品と化学製品には同じ暦月のまとまりを使い、12か月、24か月、36か月の各条件で1,500回計算した。

95%区間は、取り直した計算結果の中央95%が入る範囲だ。食品の4〜12か月目の追加分は0.158%相当だったが、24か月単位の区間は−0.010〜0.278、36か月では−0.024〜0.282と0をまたいだ。長い月のつながりを保つと、後半の追加分がほぼない形も残る

対照的に、化学製品と食品の最初の3か月の差は0.283で、24か月単位の95%区間は0.081〜0.408だった。区間が正の側に残るため、この短期差は食品の後半の遅れより安定している。この比較が示すのは、2つの集計指数で短期の動き方が異なることだ。

食品の12か月累積反応の上下差は全期間で0.080、2000〜2019年で0.035、急変期と重なるラグ窓を除くと0.004だった。ラグ窓には過去11か月も入るため、急変期の影響を外す際は、その期間に過去の月が重なる分も除いた。除外範囲は2021年1月〜2024年11月の47か月で、残る標本は272か月。どの95%区間も0を含み、上昇側が大きい形と下落側が大きい形の両方が残った

条件を変えた時に残ったもの

検証点推定(%相当)95%区間(%相当)判断
食品4〜12か月目の追加分0.158%相当24か月再抽出: −0.010〜0.278%相当0を含む
同じ追加分0.158%相当36か月再抽出: −0.024〜0.282%相当0を含む
化学−食品の最初3か月0.283%相当24か月再抽出: 0.081〜0.408%相当正の側に残る
食品の上下12か月差0.080%相当24か月再抽出: −0.147〜0.362%相当向きを絞れない

「24か月再抽出」は連続する24か月を1組として取り直す設定。反応期間は左列の「4〜12か月目」「最初3か月」「12か月累積」で示す。食品上下差は12か月再抽出でも−0.133〜0.345%相当と0を含む。

食品の12か月累積反応の上下差は全期間で0.080、2020年より前で0.035、急変期除外で0.004。95%ブロック区間はいずれも0をまたぎ、一律の値下げの鈍さは判別できない。
点は上昇側と下落側の差、横線は月を取り直して計算した95%区間。どの期間も0をまたぐため、上下差の向きを絞り込めない。図を拡大表示

企業の開示では、4つの順番で確かめる

日清製粉グループの開示では、輸入小麦の政府売渡価格が2025年4月に4.6%、10月に4.0%下がり、業務用小麦粉の製品価格は同年7月、2026年1月から改定された。原料価格が動いた月と、製品価格を変えた月は同じではない

2026年4月8日の公表では、政府売渡価格の2.5%上昇に加え、輸送費・人件費などを理由に、6月20日納品分から値上げするとした。日清製粉の例は、個社では改定日と複数の費用を会社開示で確かめられることを示す。食品全体の集計結果と同社の事情を分けたうえで、会社自身が示す日付と費用を照合する

  1. 足元の輸入指数が、いつ、どの品目で動いたかを見る。
  2. 当月だけでなく、過去のコスト変化をたどる。
  3. 会社が製品価格を改定した日と、適用対象を確認する。
  4. 原料以外の輸送費・人件費など、会社が挙げた費用も読む。

日清製粉の開示で日付を分ける

原料価格・公表製品価格の改定
2025年4月:政府売渡価格4.6%低下2025年7月から改定
2025年10月:政府売渡価格4.0%低下2026年1月から改定
2026年4月8日:2.5%上昇と輸送費・人件費等6月20日納品分から値上げ

この表は会社開示に記された原料価格と改定日の対応である。食品全体の動きは319か月の集計データで別に捉える。

月次変化にそろえ、過去11か月までの動きを照合し、12か月のまとまりを保って月の組合せを変え同じ分析をくり返す。24・36か月でも推定の幅を確かめる。企業例では原料価格、製品改定日、輸送費や人件費を順に読む。
月々の変化と過去の動きを分け、月の組合せを変えて確かめた。個別企業では、原料価格から製品改定日、その他費用へ読み進める。図を拡大表示

まとめ

約27年の月次データで比較的安定したのは、輸入価格上昇後の最初の3か月における食品と化学製品の関連差だった。食品では過去の輸入変化を含めると説明は増えたが、後半の遅れと上昇・下落の差には幅が残る。

企業の価格を読む時は、足元の指数、過去のコスト、製品の改定日、原料以外の費用を順に確かめる。日清製粉の開示は、原料価格と製品改定日のずれ、複数の費用を確認できる具体例だ。集計データで全体の動きを捉え、会社開示で個社の判断材料を読む

参照した開示・一次情報